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『お仏壇の装飾』


 仏壇の伝統工芸品としての価値を高めている要素として重要なものに、漆塗りや金箔のほかに、宮殿・戸障子などの組子、ランマの彫刻、扉金具・蝶番の彫金、そして漆にほどこされた蒔絵などがあります。

◎ 宮殿・戸障子
 仏壇の内陣にあるご本尊を安置する場所は、まさに寺院の伽藍の姿をしており、宮殿と呼ばれています。これは寺院の本堂の中心にある、ご本尊を安置する厨子をまねたものです。
 寺院をまねたものといっても、その構造は本格的で、組子と呼ばれる工法でつくられています。円柱状の柱から屋根の瓦にいたるまで、精巧に削りだした小さな組木で組み立てられます。組木の数は数千におよび、その組み立て方法は本物のお寺と全く変わりがないものです。
 ご本尊を安置する場所であるからこそ、高度な技術と手間をかけてつくられるのであり、これによってますます仏壇の荘厳さが増していくといえるでしょう。
 また仏壇の扉である戸障子も、この組子の技術でつくられています。本物の障子と同様に、精巧に削りだされた桟を組み立ててつくるのですが、さらに装飾として戸障子の表面に彫刻をのせ たものも多く見られます。彫刻は、花や木などをモチーフにした日本の伝統的な文様が多いようです。

◎ ランマ
 ランマは、部屋と部屋をくぎる襖と天井の間に、通風・採光のためにとりつけられた組子あるいは彫刻のことで、仏壇の扉上部にもこのランマが取り付けられています。
 仏壇のランマには、組子で組み立てられたもの、彫刻で彫りだされたもの、あるいは組子の上に彫刻をのせたものなどがあります。組子のランマには、縦横に桟を組み立てただけものから、斜めに桟を組み立てた菱形の組子などいくつかの形があります。また彫刻のランマには実に多様 なモチーフがあり、唐草、菊、牡丹、鳥獣などの花鳥風月や、菩薩や羅漢、天人、あるいは家紋などが描かれています。

◎ 扉金具・蝶番
 仏壇には、扉を開け閉めするときにつかう扉金具や、扉の動く部分に使われる蝶番など様々な場所に、真鍮や銅でつくられた金具がつかわれています。
 特に目立つ場所には、文様がほどこされた金具が使われ、場所によって唐草、雲、鶴、菊など様々な種類の文様が使い分けられています。
 また高級な仏壇には、職人が手で文様を打ち出した手打金具を使いますが、最近は、電気をつかって鋳造(電鋳)したり、プレス機械をつかって文様を描く技術もあります。

◎ 蒔絵
 蒔絵とは、漆で漆黒に塗られた木地に、金粉や銀粉などで花鳥風月を描いたものです。その精緻優美な姿は、日本の伝統工芸の極みともいえるでしょう。
 仏壇では、引戸や引き出しなどに、桔梗、梅、牡丹、松、紅葉、蓮、菖蒲、菊などの花と、水鳥を組み合わせて描かれています。
 美しい花が咲き乱れる極楽の池に、水鳥がとびかう姿を表わすため、こうした花鳥風月が描かれるのです。

 


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