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『伝統工芸品としてのお仏壇』

 仏壇というものが単なる家具と異なることは、言うまでもありません。仏様を祀る場所であり、亡き人の位牌をまつる場所です。家庭における「聖なる場所」であるといってもいいでしょう。
 その仏壇というものを、あらためて見てみると、「聖なる場所」であるということを差し引いても、その美しさには目を奪われます。仏壇の中央に本尊を配して、その下に位牌を置き、そして香や花などをお供えした姿はまさに荘厳というにふさわしいものです。
 仏壇というものは、もともと浄土という「聖なる場所」をイメージしてつくられました。浄土は、ありとあらゆる場所のなかでもっとも美しい、やすらぎの場所です。そのイメージを具体的な形に表現するために、職人たちが想像力をめぐらせ、技術の粋をあつめてつくったのが仏壇なのです。
 また仏壇は、寺院のミニチュアであるといえます。寺院の荘厳さを家の中に再現し、家にいながら、寺院にお参りできるのが仏壇でもあります。
 寺院が一般の住宅と異なるように、仏壇も単なる家具とは異なります。寺院は仏様がいらっしゃる建物であり、仏壇は仏様がいらっしゃる厨子です。
 寺院を建てる大工は、一般の大工とは区別され「宮大工」と呼ばれます。宮大工だけが、寺院のような荘厳な建物を建てる技術を持っていたのです。同じように仏壇も、一流の職人にしかつくることができません。
 一流の職人がつくるということは、耐久性の点でも、ただの職人がつくったものとは違います。寺院の場合、建ててから百年や二百年経過している建物はざらで、千年をこえる建物もあります。むしろ古い建物のほうが、えもいわれぬ「味」があり、美しさという点で新しい建物に負けないものを持っています。
 仏壇も同様で、一般家庭に置かれていたものでも、四百年以上前の仏壇というものが現在残されています。まして五十年や百年前の仏壇ならば、かなりの数が残っています。そして古い仏壇もやはり、何ともいえない「味」を持っています。
 一流の職人が仏壇をつくってきたからこそ、こうして何年たっても壊れることなく、年を経るごとに美しさを増していくのだといえるでしょう。
 「使い捨て」が当たり前の現代だからこそ、使い込んでいくにしたがって「味」のでてくる仏壇という伝統工芸品を見直すべきではないでしょうか。

 


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