知っておきたい 葬儀の基礎知識

悲しみを癒すために



グリーフワークとは? グリーフケアとは?

人は、死別などによって愛する人を失うと、大きな悲しみである「悲嘆(GRIEF)」を感じ、長期に渡って特別な精神の状態の変化を経ていきます。
遺族が体験し、乗り越えなければいけないこの悲嘆のプロセスを、「グリーフワーク」と言います。

この悲嘆の状態は、心が大怪我をしたような状態ですが、自然に治癒の方向に向かいます。
遺族はやがて、故人のいない環境に適応して、新しい心理的・人間的・社会経済的関係を作っていきます。「グリーフワーク」を経ることで、人は人間的に成長するのです。
この「グリーフワーク」のプロセスを支えて見守ることが「グリーフケア」です。

「グリーフワーク」のプロセスには、個々人によって違いもありますが、一般的なパターンがあります。
この一般的なプロセスを正常な「グリーフワーク」とすれば、これからズレた病的な「グリーフワーク」の状態もあります。「グリーフケア」は、人が正常な「グリーフワーク」を歩むようにサポートすることです。

グリーフワークのプロセス

一般的に「グリーフワーク」は、以下のようなプロセスを経ます。

  1. ショック期
  2. 喪失期
  3. 閉じこもり期
  4. 再生期

「グリーフワーク」の期間には、個人差はありますが、第1〜第2段階は1〜2週間が一般的です。
また、「グリーフワーク」全体の期間は、配偶者の死別の場合で1〜2年、子供の死別の場合は2〜5年ほどと言われています。

悲嘆の症状

「グリーフワーク」での悲嘆は様々な形で現れます。

身体的症状
身体的苦痛、呼吸障害、疲労感、食欲喪失、睡眠障害、気力喪失、故人と同じ症状の出現、アルコールや薬の依存 など

心理的症状
故人の面影にとりつかれる、思慕、罪責感、憂鬱、不安、怒り、敵意、孤独、自尊心の欠如、絶望、非現実感、疑い深さ、幻覚 など

行動的反応
号泣、故人の行動の模倣、行動パターンの喪失 など

認知的反応
思考・判断速度の低下、集中力の欠如 など

病的な悲嘆

死別者の10〜15%が「病的な悲嘆」に陥ると言われています。

その一つの症状は、「グリーフワーク」の長期化・慢性化です。

もう一つは、悲嘆の遅滞です。これは、逆に現れるはずの正常な悲嘆の反応が現れないことです。
まったく何事もなかったかのように振舞う人もいますし、死を喜んで受け入れるように見える人もいます。
ですが、これは悲嘆の感情を抑圧しているだけで、いつか、それが増幅した形で現れることになります。

病的な悲嘆に陥った遺族には、専門医によるカウンセリングや、薬物療法などが必要になります。

グリーフケアの考え方

「グリーフケア」の基本的な考え方は、悲嘆の表現として現れる様々な感情や行動などを、正常なものとして、共に受けとめることです。
つい、我々はそれらを良くないことだと説得したり、悲しまないように励ましたりしてしまいがちです。
ですが、そうしないように注意することが必要です。悲嘆を取り除いたり、解決したりすることはできません。

日本の社会環境は、悲しみを充分に表現することを良しとしていません。
頭で合理的に考えて、感情を抑えようとしても無理です。
感情を抑えることは逆効果になります。
悲嘆の様々な感情を正常なものとして認め、それを表現し、共に受けとめることが必要です。

悲嘆の感情表現をあまりしない人は、立ち直っていると考えるのは早急です。
悲嘆を充分に表現できない人の方が、大きな悲嘆、大きな問題を抱えている場合があります。
そのような人の場合は、悲嘆を表現できるようにサポートしましょう。

悲嘆が大きくて受けとめることが辛い場合、故人のことを喋りたくない、思い出したくないと思います。
ですから、無理矢理聞き出すことは避けましょう。
しかし、いつまでも避けていると、「グリーフワーク」は進みません。
少しずつでも、故人の死の悲しみを受けとめるようにさせましょう。

様々な感情が強すぎる時には、アルコールや精神安定剤なども助けになります。
ですが、これらは悲嘆を受けとめ、それを表現することの妨げになることもあります。
あまり依存しすぎると、正常に「グリーフワーク」を進むことができなくなります。

「グリーフケア」を目的とした専門の会などに参加することもできます。
利害関係のない第三者の、専門家やグリーフワークの経験者に話を聞いてもらうことは、とても効果的です。


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