| 悲しみを癒すために
 
 
      グリーフワークとは? グリーフケアとは?
      人は、死別などによって愛する人を失うと、大きな悲しみである「悲嘆(GRIEF)」を感じ、長期に渡って特別な精神の状態の変化を経ていきます。遺族が体験し、乗り越えなければいけないこの悲嘆のプロセスを、「グリーフワーク」と言います。
 この悲嘆の状態は、心が大怪我をしたような状態ですが、自然に治癒の方向に向かいます。遺族はやがて、故人のいない環境に適応して、新しい心理的・人間的・社会経済的関係を作っていきます。「グリーフワーク」を経ることで、人は人間的に成長するのです。
 この「グリーフワーク」のプロセスを支えて見守ることが「グリーフケア」です。
 「グリーフワーク」のプロセスには、個々人によって違いもありますが、一般的なパターンがあります。この一般的なプロセスを正常な「グリーフワーク」とすれば、これからズレた病的な「グリーフワーク」の状態もあります。「グリーフケア」は、人が正常な「グリーフワーク」を歩むようにサポートすることです。
 
 
 グリーフワークのプロセス一般的に「グリーフワーク」は、以下のようなプロセスを経ます。 ショック期喪失期閉じこもり期再生期
 「グリーフワーク」の期間には、個人差はありますが、第1〜第2段階は1〜2週間が一般的です。また、「グリーフワーク」全体の期間は、配偶者の死別の場合で1〜2年、子供の死別の場合は2〜5年ほどと言われています。
 
 
 悲嘆の症状「グリーフワーク」での悲嘆は様々な形で現れます。 身体的症状身体的苦痛、呼吸障害、疲労感、食欲喪失、睡眠障害、気力喪失、故人と同じ症状の出現、アルコールや薬の依存 など
 心理的症状故人の面影にとりつかれる、思慕、罪責感、憂鬱、不安、怒り、敵意、孤独、自尊心の欠如、絶望、非現実感、疑い深さ、幻覚 など
 行動的反応号泣、故人の行動の模倣、行動パターンの喪失 など
 認知的反応思考・判断速度の低下、集中力の欠如 など
 
 
 病的な悲嘆 死別者の10〜15%が「病的な悲嘆」に陥ると言われています。 その一つの症状は、「グリーフワーク」の長期化・慢性化です。
 もう一つは、悲嘆の遅滞です。これは、逆に現れるはずの正常な悲嘆の反応が現れないことです。まったく何事もなかったかのように振舞う人もいますし、死を喜んで受け入れるように見える人もいます。
 ですが、これは悲嘆の感情を抑圧しているだけで、いつか、それが増幅した形で現れることになります。
 病的な悲嘆に陥った遺族には、専門医によるカウンセリングや、薬物療法などが必要になります。
 
 グリーフケアの考え方 「グリーフケア」の基本的な考え方は、悲嘆の表現として現れる様々な感情や行動などを、正常なものとして、共に受けとめることです。つい、我々はそれらを良くないことだと説得したり、悲しまないように励ましたりしてしまいがちです。
 ですが、そうしないように注意することが必要です。悲嘆を取り除いたり、解決したりすることはできません。
 日本の社会環境は、悲しみを充分に表現することを良しとしていません。頭で合理的に考えて、感情を抑えようとしても無理です。
 感情を抑えることは逆効果になります。
 悲嘆の様々な感情を正常なものとして認め、それを表現し、共に受けとめることが必要です。
 悲嘆の感情表現をあまりしない人は、立ち直っていると考えるのは早急です。悲嘆を充分に表現できない人の方が、大きな悲嘆、大きな問題を抱えている場合があります。
 そのような人の場合は、悲嘆を表現できるようにサポートしましょう。
 悲嘆が大きくて受けとめることが辛い場合、故人のことを喋りたくない、思い出したくないと思います。ですから、無理矢理聞き出すことは避けましょう。
 しかし、いつまでも避けていると、「グリーフワーク」は進みません。
 少しずつでも、故人の死の悲しみを受けとめるようにさせましょう。
 様々な感情が強すぎる時には、アルコールや精神安定剤なども助けになります。ですが、これらは悲嘆を受けとめ、それを表現することの妨げになることもあります。
 あまり依存しすぎると、正常に「グリーフワーク」を進むことができなくなります。
 「グリーフケア」を目的とした専門の会などに参加することもできます。利害関係のない第三者の、専門家やグリーフワークの経験者に話を聞いてもらうことは、とても効果的です。
 
 
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